島の暮らしと共に生まれた器

アトリエ五香屋　　主宰　水野景敬

石垣島の南西約6．5ｋｍに位置する竹富島。珊瑚の白砂が敷き詰められた道に石垣、そして赤瓦屋根の家々が並ぶ昔ながらの集落は、風水思想に基づいた美しい島のまちなみを作り出します。また、種子取祭などの年中行事、芸能、ミンサー織など、さまざまな伝統文化が伝承されています。

島で唯一の焼き物工房「アトリエ五香屋（ごこうや）」を主宰する水野景敬さんは、１０歳から陶芸教室に通い始め、１５歳から本格的に焼き物づくりを始めます。１９９２年に焼き物の産地である栃木県笠間市で工房を立ち上げ、その後、１９９５年に２５歳で竹富島へ工房を移転しました。 県外出身者の水野さんは、公民館や島の環境保全活動、そして年中行事にも積極的に参加しながらモノづくりを続けています。

※竹富島の年中行事のひとつ種子取祭で奉納芸能を演じる水野さん

五香屋の作る焼き物は、民藝的な素朴さがベースとなっています。中でも人気なのが、竹富島の自然を背景に、海人や畑人など、島の暮らしや文化がおおらかに描かれた「みんな文」シリーズの器です。

工業製品とは違い、工芸品は、地域の風土と作り手の生き様が物に表れます。水野さんの「まちなみや伝統文化といった島の価値を残していきたい」という思い、さらに、島に根を張った暮らしの中で、作り手と地域が調和したデザインが生まれます。地域にほどよい経済をまわし、文化との循環を生む、これも工芸品の大切な役割だと思います。