眞正陶房
ゆいまーる沖縄本店から国道329号線を那覇向けに進み、真地小学校を左手に路地を進むと酒甕をモチーフにした看板があります。
右手の小さな坂を進めば、見えてくる「眞正陶房」
県内でも珍しい酒甕作りからスタートした工房なだけあって、敷地内の至る所に大小さまざまな酒甕が置かれ、入る前から胸が躍ります。
眞正陶房は平成元年、西原町徳佐田に初めて開窯しました。
その後、読谷村長浜に移り、12年前に現在の那覇市真地に工房を移転。
元々製作していた酒甕作りは一旦お休みして、今は器をメインに製作しています。
眞正陶房の器の特徴といえば、復活したリングシリーズをはじめ、マカロンシリーズやアラベスクシリーズなど華やかで遊び心のある色使いですが、その一つ一つのネーミングにもこだわりがあります。
「鴨の羽(かものは)色」やガラス釉を使った当店人気の「オリーブ」など、他ではみられない独特なネーミング。実はずっと気になっていたのがその色名です。
「オリーブも最初は鉱物の名前をつけようとしていた。でもそうすると、どうしても日本語の言葉として硬くなってしまう。普段使いするものを硬い名前にはしたくないから、熟す前の若々しいオリーブの色、ということでオリーブと名付けた。」 と、日々の生活に馴染むように試行錯誤を繰り返しています。
色名は安里貴美枝さんを中心に、工房のスタッフで完成した色を見て考えているそう。
ネーミングに限らず心掛けているのは、「日常使いしやすく、食卓が明るくなるような器作り」。
使う人の “暮らし” を考えた器作りができるのは、貴美枝さんの女性らしい観点、主婦としての経験の賜物です。
現在工房では、新スタッフ2名を含めた9名の方が分業体制で製作しています。
珍しいのはその製作形態。
一般的な工房が設けている「修業期間」のようなものはないといいます。
「仕事の目的はお金を稼ぐこと、お金を稼ぐことは人生を豊かにすること、だから自分の時間が削られる従来の修業期間のようなものは設けていない。」
そう語るのは眞正陶房の山城真喜さん。
その考えは新人教育にも影響し、山城さんが苦労した分、スタッフが楽に仕事ができるように常に考えているという。
「せっかく生きているのだから、やりたくないことはやらない。」
一見ぶっきらぼうな言葉の裏には、スタッフへの細やかな気遣いがありました。
新スタッフを迎え、より一層魅力的な商品を届けてくれる眞正陶房、山城さんにこれからの展望を尋ねると、
「やりたいことがたくさんある一方で、克服すべき課題も多い。まずは親父が当たり前にこなしている仕事を自分もできるように技術を磨いていかなければいけない」と、父であり師でもある
真尚さんの背中を追いながらも、新しい眞正陶房の”彩”を見せてくれそうです。